プラスチック [05]
次の日の学校。
いつもと変わらない学生が登校する風景。
何も変わらない飽き飽きする風景。
教室の中。チャイムが鳴った。
この光景もいつも飽きもせず同じ。
スガオは窓際の席に座っていて、教室で一つだけ空いている席を見ている。
ガラガラと引き戸のドアが開けられ、担任の教師が入ってくる。
「ハイ、おはよう。
じゃあ、出席とるぞー
あー、全部いるな?
ん?サクラがいないか、
休みと…」
そう言って、その教師は出席簿のサクラのところに印を付けた。
「ええと、今日は五十六ページからだな…」
と言いながら、教師は黒板にチョークで文字を書き始めた。
スガオは窓の方に目を向ける。
窓の外の晴れた景色。がスガオの目に入ってくる。
遠くで工場の煙が上がっている。
「魔法使い…
風邪でもひいたかな?」
スガオは小さな声でそう呟いて、ノートにペンを走らせた。
魔法使いも風邪をひく。
次の日もサクラは休みだった。
スガオは学校の屋上にいた。
今は授業中なので誰もいない。
スガオは空を見た。
雲一つない青空が広がっていた。
「おー晴れてる、晴れてる。
こう、晴れ続くと嬉しくも何ともないな…」
スガオは空を見上げながら持っていたパンの袋を無造作に開けて、
囓った。
「サクラが二日も休むなんて珍しいな…」
サクラが造った虹の光景が思い浮かべる。
「プラスチックで虹か…
世の中、不思議なこともあるもんだな…
本当に
魔法のキャラメルだ…」
その日の帰り、スガオはもしかしたら、
サクラがいるかと思い。
いつもの場所に行ってみたが、そこには誰も居なかった。
「居るわけないか…」
スガオはいつものところに寝こっろがった。
「しかし、
どうした魔法使い?」
空は暮れかかって赤く染まり始めた。
サクラがナナをなぐさめた時の光景がよみがえる。
「夕焼けか…」
夕焼けの記憶のせいだろうか、
つい、二日前の記憶なのにずいぶん遠い記憶に思えた。
「ゴーッ」というサクラのかけ声とともに飛び出した虹。
それを夢中で見ていたナナという女の子。
「プラスチックで虹…
全然、科学的じゃないな。
ふふっ
でも、ロマンがあるな
サクラにはぴったりだ…」
太陽は真っ赤に燃え上がり、工場の煙も赤く染めた。
「僕にはあんな使い方はできない
うん、サクラにはぴったりだ…」
スガオはそう言って目を閉じた。
冷たい風が草や木の葉を揺らし、寒そうな音を立てる。
日が暮れていった。
次の日もサクラは学校に来なかった。
「ん?サクラのやつ、
今日も休みか
家から連絡もないみたいだし。
誰か知ってる奴いるか?」
朝の出席で教師がそう言ったが誰も事情を知るものは居なかった。
休み時間。
サクラが気になってサクラの席をちらちら見るスガオを見て、
友人のトキワが声をかけてくる。
「何?
おまえもサクラの休みの理由知らんの?」
「おまえもって何?
知らないよ」
「だって、
おまえサクラと仲いいじゃん」
「どうせ、
風邪でもひいたんだろ?」
そう言ったスガオの顔を見てトキワが笑う。
「そうだな」
サクラが居ても居なくても学校は予定通り進んでいく。
そんなことを考えて、なんだかしんみりしている自分がおかしかった。
たかが、三日休んだだけじゃないか…
終了の鐘が鳴り、スガオが学校の玄関から出ていく。
土曜日なので、まだ日は高く青空が広がっていた。
相変わらず晴れていて、スガオはあまり好きではないが雨が恋しくなってきた。
道路を歩いているスガオ。
その横で、せわしなく自動車が走っていく。
足下のアスファルトの地面に落ち葉が落ちている。
スガオはなにげにそれを拾って、それをもてあそびながらまた歩き続けた。
「きっと、
風邪じゃないよな…
ちょっと、あいつの家の方にでも
行ってみるかな…」
拾った落ち葉を回す。
クルクル、
クルクル、
「でも、
行ったってな…
どうするんだ?
虹のせいで何かあったのかな?」
クルクル、
クルクル、
「…何かあるわけないか、
とりあえず
あそこに行ってみるか…」
クルクル、
クルクル、
ポロッ
スガオの手から落ち葉が落ちた。
「あ…」
それは風に流され。あっという間に遠くに飛んでいってしまった。
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